法人・個人事業主が支払う税金の種類とスケジュール(源泉所得税・予定納税編)
今回執筆していただいた税理士さん
西田成希税理士事務所 西田成希さん
サラリーマンを経験した後、会社を辞めて税理士試験を受け、税理士として西田成希事務所を開設。大学の講師として税務を教えるなど、税理士業務以外でも多方面で活躍中。
税理士の西田です。よろしくお願いします。
私は、もともとサラリーマンだったのですが、サラリーマンを辞めて税理士試験を受けました。サラリーマン時代は、全く税金のことなど考えていなかったので、まさか自分が税理士になるとは思ってもいませんでした。そんな私ですので、税金を身近にとらえてもらえるような話ができたらと思っています。
早速ですが、今回は、法人でも個人でも関係のある話です。ただ、いきなり少しマニアックな内容かもしれません。お許しいただきお付き合いください。
給料等に係る源泉所得税について
法人や個人が従業員に給料を支払う場合は、その支払う給料から所得税を差し引いて支払います。これを源泉徴収制度といい、差し引かれた所得税を源泉所得税といいます。 差し引いた源泉所得税は、原則として、従業員に給与を支払った月の翌月10日までに納めなければいけません。
ですが、一定の条件を満たす場合は「納期の特例」制度を利用することができ、その場合は、毎月支払いではなく、年に2回に分けて支払うことが可能です。
この「納期の特例」制度を使うと、1月~6月までの源泉所得税は7月10日までに、7月から12月の源泉所得税は翌年の1月20日までに納める形になります。
「納期の特例」制度を利用できる条件とは、「常勤の従業員が9人以下」の事業者に限ります。
常勤の従業員とは、多忙な時期だけ臨時に雇った人は除き、毎月働いてくれているパートやアルバイトは含めるため、正社員が9人以下という意味ではありません。
社員契約や、パート・アルバイトの契約でなくても、専属で仕事をお願いしていて、給与を支給している場合にも源泉徴収の義務は発生します。
もちろん、個人事業主で従業員が1人もいない場合は源泉所得税の支払いはありません。
詳しくは、国税庁の源泉徴収のページにも記載されているため、そちらで確認しておくと間違いないでしょう。予定納税について
次に予定納税の話です。消費税の中間申告については、量が多くなるため別の機会にします。
予定納税は、簡単に言うと、前年度に納めた税金の実績に応じて、次年度にかかるであろう税金を先に納めるという仕組みです。
税務署の建前としては、先に支払いをしている方が最後に税金の支払額が少なくなるため、楽だということなのでしょうが、実際に先に納める方としては辛いですね。
予定納税に関しては、個人事業主と法人の場合では条件や内容が異なります。
個人の場合
個人事業主など、個人の方の場合は、前年分の所得税が15万円以上あった場合、翌年から適用されます。
個人の場合は7月31日、11月30日、確定申告時の合計3回に分けて3分割で支払います。
法人の場合
法人の場合、前年度の法人税が20万円超であった場合、次年度から適用されます。
法人の場合は決算月によって納期限は異なりますが、確定申告の期限から6ヶ月後と、確定申告時の2回に分けて2分割で支払いをします。
3月決算の場合は、確定申告の期限が5月になるため、予定納税の支払いは11月に発生します。
法人は個人に比べて、分割回数が少なく、1回の支払いが高額になるため、予定納税を支払うための現金をあらかじめ計算して置いておく必要があります。
予定納税ができない場合
事業はいい時もあれば悪い時もあるため、前年度はとても好調だったのに、年度が変って売上が落ちて、予定納税の税額が支払えないというケースがあります。
例えば法人の場合、上半期が赤字になった場合は、半期で一度仮決算をして、赤字で中間申告を行うことで、予定納税をしなくて済むケースもあります。
仮決算をすることで助かる場合もありますが、仮決算をするための税理士費用や手間もかかるため、最終手段として考えておいて、できるだけ税金を納められるように対処した方がいいのは言うまでもありません。
また、予定納税の税金確定後に「支払えないから」と仮決算することは不可能ですので、毎月税理士に資料を渡して処理してもらうことにより、早めに対策を取ることが重要です。
これは法人の話で、個人で予定納税が支払えない場合は、別の方法で予定納税を減額することができます。
個人の方は所轄の税務署に「予定納税額の減額申請書」を提出して承認されれば予定納税額は減額されます。
第1期分の予定納税については、7月15日が減額申請の期限となります。第2期の予定納税を減額してもらうには、11月15日が減額申請の期限となります。
事業を営む上でかかってくる税金は、たくさんありますが、今回は、以上のように源泉所得税と予定納税について紹介しました。
源泉所得税で納期特例制度を使った場合や予定納税は、毎月支払うものではないため、忘れていることが多いです。また、源泉所得税の納期の特例制度を使った場合には、一度に高額の税金が発生することもあります。
これに加え、住民税や消費税といった税金もかかってくるため、スケジュールを管理しておかなければ、いざ税金を支払う時に現金が無い、といった窮地に追い込まれる可能性があります。住民税・消費税に関しては今後説明していきますが、税金の支払いのスケジュールを考えて、きちんとお金の支払いを管理できるようにしておきましょう。
※ 実際の適用などについては、税務署や税理士にご確認ください。
税務年間スケジュール(個人の場合)
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税務年間スケジュール(法人・3月決算の場合)
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